八神ユーリ

『異世界テンイ!』〜略〜…続きの続きの続き、 の続き。 ーーー 「…一応胸が動いてるからちゃんと生きてるな」 「ギルドが管理している初心者用のダンジョンだ、よほどの事が無い限り人死は出ないだろう」 ロボットの手の動きで生死を確認して呟くとおじいさんがお茶を飲みながら返す。 「だけど傷だらけの人間をこのまま放っては置けないな…下手したらそのまま死ぬ、なんて事もありえるぞ」 「…うーん……ボスがいるフロアが目の前だというのに………しょうがない、今日はもう引き返すか」 おじいさんの言葉に涼は悩みつつも人命を考慮した判断をする。 「そうだ、人の命には変えられない。私たちはまた次がある、偉いぞリョウ」 ロボットの中にある魔石を使い、新米の冒険者?共々庭に帰還させた涼の行動をおじいさんが褒めた。 「一応3Fまでは進めたからな、明日でボスを倒してダンジョンクリア出来たらいいけど……ってか意外と重いな、コイツ」 「では私はロボットを直しておこう」 涼は傷だらけの冒険者?を背負って近くの村のギルドへ、おじいさんはロボットを家の中へ運ぶ…という二手に分かれて行動する。 「……すいませーん」 「……え?あ、はいはい!」 小さなギルドの建物の中に入るといつものように受付には人が居ない。 涼が慣れたように声をかけると奥から若い女性が現れた。 「あら、リョウさん!今日はどうされたんですか?」 「ちょっとダンジョンで傷ついた人を拾ったんで、手当をお願いしたいんですけど」 涼を見た女性がそう尋ねると、背負っている人を見せるような動作をしながら答える。 「ああー、分かりました。他の商業施設だとお金がかかりますもんね」 「まあ、金があればその選択肢もあったんだけどね…」 受付の女性の少し棘があるような言い方に涼は苦笑いしながら自虐的に返す。 「奥まで運ぶのをお願いしても良いですか?今はちょっと他の人たちが居ないので…」 「ああ、はいはい…大丈夫、大丈夫…ちょっと疲れてきたけど」 よいしょ、と傷ついた冒険者?を背負い直すと受付の女性の後をついて行くように二階への階段を登った。 「…ふう、じゃあ俺はこれで」 「ありがとうございます。お疲れ様でした」 涼は笑顔の女性に見送られながらギルドの建物から出て帰路につく。
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