青黒階段

 エブリスタを始めて約1年。ようやくつぶやき機能を使おうと思います。  《三題噺》  「三題噺」を知っていますか? 落語でよく使われるもので、客から出してもらった3つのお題を織り混んで、即興で話を作る演じ方です。文芸部を舞台としたミステリー小説「文学少女」の話中でも、部活動と一環として使われており、私自身も影響を受けて暇潰しにやっていた時期がありました。  今回は頭にポンと浮かんだ単語を使って、軽く話を作ってみます。  ***  『ブドウ,机,だるま』  ブドウがない。  テーブルに置いたはずのブドウがない。 「ねえ母さん、そこに置いてたブドウどこいったの?」 「さあ? 知らないわよ、あなたが食べたんじゃなくて?」  違うよ、と言って部屋を見渡す。おかしい。母は触るのも嫌なくらいブドウが嫌いだ。だから母がブドウを手に持って冷蔵庫に入れるなんてことしないはずだ。それにこの季節のリビングは、エアコンをつけない夜中は冷暗所のように寒いから、冷蔵庫に入れる必要はないのだ。  部屋に戻り、机の上のだるまの入れ物を見る。にっこりとした表情で口大きく開けていて、そこに物が入れられるようになっている。数年前、どこかの雑貨屋で見つけたものだ。 「まさかこいつが食った訳ねえよなあ……」  あれ、こいついつも「腹減ってます」って感じの憂鬱な顔をしてた気がするが……。まあ一応、とだるまの口に指を突っ込むと、丸くて冷たくて、プニっとしたもの__ブドウの粒が。  だるまの中身をひっくり返すと、コロンコロンとブドウが出てきて、最後に何もついていないブドウの枝が出てきた。 「……お前かよ!」  ブドウを取り出しただるまは、いつの間にか憂鬱な表情になっていた。  *** 夏の黄昏ポスト https://estar.jp/novels/25478017  更新しました。

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