久美子は、時々夜遅くに、カンランが近所を走り廻っているのを知っていました。でも、何も悪いことをしている訳でもないし、毎朝、必ず家に戻ってくることが分かっていましたので、全く心配していませんでした。 ある朝、久美子がカンランを繋ごうとしましたが、庭にカンランの姿が見えませんでした。久美子は、何度も何度もカンランと呼びました。初めの内は、優しく呼んでいましたが、全く応答が無いので、もっと大きな声で呼びました。しかし、カンランの吠える声は聞けません。心配になって、通りに出て、カンランを呼びました。近所の塀越しに声を掛けたり、通りに行ったりしました。たぶん、どこかの家の庭にいると考えたからです。そうしているうちに、学校に行く時間になりました。久美子は渋々、家を出ました。

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