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【少女とバケモノ】
 家族をなくした少女の元に、突然彼が現れた。 “独りで生きていくのはつらい。私が家族になってあげよう”    身寄りのない彼女は彼の申し出を喜んだ。  彼が何者なのか怪しむ事より“おはよう” “おやすみ”と言える相手がいる事が彼女には重要だった。  季節が巡り、幼かった少女は成長してたくさんの友人が出来た。     ある日友人のひとりに『僕の恋人になってほしい』と言われ、彼女は承諾した。しかし翌日には恋人が失踪し、その後新しい恋人が出来る度に、煙のように消えてしまう。 『私は疫病神だわ。愛する人が皆、いなくなるの』 そう落ち込む彼女に“私は君の傍にずっといるよ”と微笑む同居人。 『私がいるのにどうして他の誰かを愛する必要があるんだい?』    ナイフの刃を押し当てられたような同居人の言葉に少女は驚き『あなたは誰?』と叫んだ。  今まで彼が何者で自分といる理由を一度も疑問に思わなかった事が、一気に溢れ出した。 『あなたはいったい誰なの?』 『私は君の“家族”さ』 『あなたは何の仕事をしてるの?どうやって私の学費を支払っているの?なぜ見た目が変わらないの?ねぇ、どうして』 『君は何も心配しなくていいよ。飢えも寝床も私と居る限り困る事はない』  同居人は彼女を優しく抱きしめた。けれども、そこにあるはずの体温は一切感じない。 『あなたは“人間“じゃないのね』 彼は何も答えず、微笑んですらいなかった。 『もうあなたとは一緒に暮らせない』  身一つで家を飛び出し、住む場所を転々と変えた。 町の人は“よそ者“の彼女に冷たく、夜眠ると異形の姿の“彼”に追われる夢を見た。  どこにいても彼女の心が安らぐ事がない。  生きる事に疲れ果てた彼女は、父の眠る墓地で毒を飲もうとした。 『その方法では天国には行けないよ』  振り返ると、“彼“が父によく似た姿で笑っている。 『……もう楽になりたいの』 『地獄はもっと苦しいさ。でも人間をやめたらそうでもないよ』  “彼”が笑いながら近付き、『もっと早く君をバケモノにすれば良かった。これならずっと一緒だ』と姿を変えた。 『……本当は君をちゃんと天国に行かせてあげたかったんだけど。……ごめんね。バケモノになっても私は父親失格だ』  その後、バケモノの親子が地獄で幸せに暮らした。
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フライングをしてしまいました……。 申し訳ありません……。 お許し下さい。 メリーバッドエンドに持って行く展開があったのか……。 お見事です。 寂しさと絶望の中、ラストの心温まるエピソードが、胸を打ちます。 GIFを見て、そのままの俺とは大きな違いです。 勉強になりました。 この物語と出会えた事に、深く感謝いたします。 また、このような機会があったら、参加させて下さい。
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え?フライング? いえいえ、多分私が誤字訂正でレビュー上げ直しちゃったので(^_^;) さっきコメントに書きましたが、ポラードさん物語を生み出すスピードがかなり早いですね✨✨ 私もポラードさんのレビュー見てすぐに返信のコメント打ってたのに、興奮して語彙力が低下してるし、めっちゃ時間掛かってました(-_-;) 逆転劇ってかなり難しいのに、綺麗にまとまっている文章力に思わず【わぁ〜!】って叫んでしまいました。 ぜひぜひ、またショートストーリーに参加して頂けたら嬉しいです! あと、今エブの妄想コンテストで【バケモノ】がお題で募集されてましたが、ポラードさんは参加されてますか? 逆転劇、とて
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