三国時代のあと
中原に居を構える曹魏、 長江流域、呉会に割拠する孫呉、 天嶮の他に拠り益州を統べる蜀漢。 楚漢戦争、光武帝の中興の時代と異なり 天下が一人の英傑に帰服することはなく、 三者三様に鎬を削り合った。 それが、三国時代である。 ここまでは多くが知り得るものの 結末はどうなるのか?三国のうちで 最終勝者となり得たのは孰れか? という肝心の部分は意外と知られていない。 答えは、三国のどれでもなく、 魏から禅譲を受けた、晋という第四勢力が 油揚げを掻っ攫ってしまうのである。 三国、いずれのファンも愕然とする結末だ。 「三国志」はいうなれば 敗者たちの歴史という事になるが、 日本人というのは、とかく 判官贔屓をしやすい。 舞台から退場した英雄たちが もしも、ボタンのかけ違いで 天下を統一できていたら…… 破れた浪漫の、続きを見せてくれたら…… そんな夢想を胸に抱いて止まないのである。 三国志の物語は、一般的には 四百年の歴史を紡ぐ漢の末裔 劉備、字を玄徳を主役に据えて 進行する手法が多く見られる。 事あるごとに陣営を鞍替えし、 敗走を繰り返しながらも、決して 曹操の下風には立とうとせず、 多くの人間が劉玄徳に付き従い、 蜀の地に王朝を築くに至った。 劉備は蜀漢建国から2年で崩御し、 その40年後、国家の命運は尽きる。 多くの英雄豪傑を輩出した蜀は最後、 魏の鄧艾に「降伏」という道を選んだ。 決して間違った選択では無いが、 読者からすれば、不完全燃焼である。 実際に、劉備が天下を統一するという 架空戦記はこれまでに幾度か作られてきたが 荒唐無稽な出来レースと化しているものが 多かったように思われる。 この物語は、史実を前提として崩さずに 劉備やその臣下たちの後裔が 歴史の荒波の中、もがく姿を描いており、 我々と地続きにある等身大の人間の姿が 如実に浮かび上がってくる。 諸葛亮が死んだ後は触れられない 三国後期から、五胡十六国の初期を きちんと精査し、矛盾のないように 描き上げている手腕と情熱に脱帽する。 物語はこれから、という時に 終幕を迎えてしまうのがとても残念だった。 然し乍ら、三国志ファンには 是非とも勧めたい快作です。
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なんと、ありがたい感想を頂きました。見届けていただき、感謝感激でした。 ンバ様の、後漢書の解説もさすが、誰でもできるものではありません。今後も拝見いたします!
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レビューの1000字制限はきつすぎます。 泣く泣く途中で切り上げたので、不自然な文章になっちゃいました。 いま、晋書の苻堅伝を訳してるんですが、やっぱり五胡十六国は面白いですね😆
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