香る記憶
昔のサスペンス映画では、逃げる主人公が タクシーに、どこでもいいからとにかく出して!というシーン、やたらありました。 この短編は、ちょっと違う。遠くまで、とそのお客は言います。言う通り走らせる運転手。遠くまで、それは距離ではなく、時間のことだったのかもしれません。 最後に、お客が降りた後になって誰だかわかるのですが、最初読んだときは、木の香りだけでは物証にしては弱いかな?と、正直思いました。でも、香りだからこそ、深くしまわれた記憶がよみがえる、すぐにそう思い直すことができました。 記憶をつかさどる海馬と嗅覚の密接なシナプス、視覚や触覚、味覚ではなく嗅覚だからこそのストーリーです。 白黒の映画のような、心に残る短編です。
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