ウィザード

大化けする可能性
※ネタバレを含みます  自殺を試みるヒロインと、それを止めようとする主人公の図式に始まり、(主人公自ら)過去を述懐する形で本編へ入っていくが、描写がどうにも味気ない。  ゲームの配役はほぼ11Aと同様で、初日占い無し。狼サイドはかなり序盤で割れてしまうため、「人狼が誰なのかを当てる」という楽しみ方には向かない。  そんな中で、主人公に委ねられた「狂狼」という特殊配役が目を引く。「狂狼」は実体化した(?)主人公の別人格として描かれるのだが、互いに何ら影響を及ぼしているように見えず、必然性が感じられなかった。折角の独自要素であるのに、活かしきれていない。  推理要素や掛け合いも必要最低限といった雰囲気で、淡々としているというよりは描写不足。結局どういった経緯で人狼ゲームが運営されていたのかも、最後まで不明瞭のまま。ドラマチックに魅せる要素は揃っている筈なのに、上手く料理できていない印象。  主人公とヒロインの関係の帰結は素晴らしく、デスゲームらしからぬ読後感の良さがある。それだけに、他の要素の練り込み不足が目立ってしまう点が、非常に残念だった。  総合的な完成度は今ひとつにしろ、少し手を加えるだけで、一気に化ける可能性を秘めている。リメイクに期待。

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