現代妖怪よ永遠に……
日常と非日常の邂逅、 モダン・タイムス・ファントムの第三作。 二作目には、人間の若者代表(に思える) 髙橋海王人が登場し、ヒトの視点から 佐藤先生たちを覗けるように。 そうして、人妖・若者と大人といった テーゼの対立が生まれ、発展してゆく。 モダン1のレビューを書いた際に、 この演出・構成について、 しっくり来る表現が見つからなかったが 「止揚」が一番近いかも。 「2」の敵役は、試練を経ずに 成果のみを得ようとする (昨今の創作ニーズを反映させたかのような) 人の欲望や怠惰を糧にする悪魔。 人妖いずれとも異なる存在を 人妖の混成で乗り越える、 ともすれば重くなりかねない題材を 軽妙に、鮮やかに料理する。 これこそ筆力の為せる業。 高橋も、勿論佐藤先生も 「2」の作中で確かな成長を遂げたのだ。 また、私の「2」の推しは断然 桜河蕾美さんである。 良くも悪くも彼女に振り回されたので 印象がとっても強かった。 第三作には、過去に妖との因縁を抱える 警察官・青木春馬が登場。 (2の終盤から出てるけど) 佐藤視点、春馬視点をザッピングし 怪事件の真相を追う構成である。 佐藤パートと春馬パートでは 雰囲気がたぶんに異なり 故に別の作品を交互に覗いているかのよう。 杜くん、長尾さん、三重北さんなど 「3」の新顔もまた個性的。 中でも一際存在感を放っているのが 妖でありながら人を愛してしまった男、 芝本仁さんである。 物事に筋を通す任侠ファントムだ。粋だ。 彼がいい、とにかくいい、すごくいい。 今回、春馬の対に配置されていたのが 彼だったように思えてくる。 春馬は、両親を妖に殺され、 その間自身は息を潜めて ただ惨禍が過ぎ去るのを待ったという。 妖を憎むと同時に、自己嫌悪に苦しむ。 そんな春馬と芝本さんのやり取りは 人妖の関係性を新たな方向に ブリッジさせる。屈指の名場面だ。 三作目となれば、各キャラクターに 愛着が沸いてきている故に、もう 一番好きなキャラは動かない……と 考えていたが、更新されてしまった。 そして、 止揚の手法は春馬と芝本さんの他、 佐藤先生と興梠さんの 仲にも適用されている気がする。 それも、忘れた頃に来る。 普段は素っ気ないが、この二人は なんだかんだでお互いを 誰より認め合っているのだ。 素敵な作品との巡り合わせに ただただ感謝です。
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