小清水志織

楽しませていただきました
 こんにちは、待遠鳴さんと同じ高校を卒業したT. Y.です。『紫苑』を読ませていただきましたので、お願いされたとおり批評を書きたいと思います。  まず全体の印象として、非常に繊細で透明感のある文体だと思いました。登場人物がまとう貴族的な雰囲気や言葉遣い、ティアムとモンガータのキャラクター、暗い高山の森の中という舞台設定などが総合的に「異国情緒」を醸し出しており、待遠鳴さんの高い創作意欲を感じました。  「孤独ゆえの愛の希求」「情愛と独占欲」「喪失体験と復活」が本作のテーマとお見受けしました。性や情愛、血といった、一歩間違えれば汚い表現となってしまいがちなものを、持ち味の繊細な描写で美しくまとめていると思います。きっと、創作にだいぶ時間を割かれたことでしょう。本当にお疲れ様でした。  さて、次に気になった部分をいくつか指摘します。  一つは、冒頭のティアムの生い立ちの部分です。様々な人間の間をたらい回しにされる様子が描かれていますが、少しその描写の回数が多過ぎる気がしました。「金で売られる→偽りの幸せの生活→捨てられる」の繰り返しなのですから、具体的な描写は2回程度にとどめ、あとはティアムの回想で触れるとコンパクトになると思います。それで紙幅を節約したほうが、後の山場であるモンガータの死やその復活の部分を膨らませられます。  次に、モンガータと出会って以降のティアムが充実しすぎているという点です。モンガータを真に愛しているならば、喧嘩の一つもあっていいと思いました。現状では、最後に壮絶な別れが待っているにしろ、甘美な描写が連続するので、夫婦生活にしてはちょっと非現実的かな、と感じます。  最後に、ラストシーンでモンガータが復活しますが、なぜ「復活できる」結末を選んだのか聞いてみたくなりました。医療でも魔法でも、死者は蘇らない方が読者の共感を呼ぶ気がするのですが…(個人的な偏見でしょうか?)。また、記憶を失った彼女を得て、本当にハッピーエンドなのでしょうか。批判というより、素直に待遠鳴さんの意図を知りたいです。  普段、待遠鳴さんはどんな小説を読んでいますか? 僕の方からもお薦めしたいものがいくつもあります。この間お渡したメアドに送ってくだされば、可能な限り早くお返事します。  非常に楽しく読ませていただきました。ありがとうございます。今後の作品も待っています。
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