こんぎつね

生きる意味を考えさせられるちょっと悲しいお話
コメディとホラー・ミステリーで有名なももたろ先生の最新ホラーシリーズ『拝み屋』の第三話。第一話・第二話の異能バトル的な魅力は健在。しかし、今回個人的に最も特筆すべきは前半の吸血鬼でしょう。 吸血鬼になるウィルスに感染した人々が施設に閉じ込められ、そこで一生を過ごす羽目になる。という設定で、今回前半に出てくる吸血鬼達は、それが嫌で自由を求め脱走した少年少女です。 紆余曲折あって、最後はとある人物に殺されてしまうのですが、その水際に言った"でも後悔してねえよ。やっと自由を――"というセリフがとても印象的でした。 自由を奪われ、無味乾燥とした生活を強いられる。 主人公の御上はそんな境遇の少年たちに、それでもいつかは(ウィルスに対する薬ができれば)自由になれるかもしれない。それを夢見て生きろと言いました。 ですが、そんな大昔からいた吸血鬼に対する薬が現代にもなってできていない時点でそれができる可能性は望みが薄いように感じられます。 こういった怪異を取り扱う仕事に携わっている茶木でさえ、御上に言われるまで吸血鬼の存在を知りませんでした。となれば、この作中世界であっても吸血鬼ウィルスの存在は一般的に知られているものではないでしょう。ならば恐らくは一般社会で過ごしている大学の研究者や製薬会社の研究員が知らない可能性が高いです。だとすれば尚更薬ができる可能性は絶望的。たとえ研究者たちがその存在を知っていたとしても、吸血鬼ウィルスが人を吸血鬼に変えるメカニズムが不明であると作中で言及されている以上、薬を作るのはやはり困難を極めるでしょう。作用点のわからない薬なんて作りようがありませんからね。まあ仮にわかったとしても薬ができるのには一般的に十年以上かかると言われているので、ちょうどいい既存薬の再利用でもできない限りは吸血鬼ウィルス感染者は少なくとも後十年以上は監禁され続けることとなるでしょう。 そんな状況でほぼ有り得ないいつかを夢見て不自由を強いられる。そんな状態で生きるのはさぞかし辛いことでしょう。 そんな彼らの気持ちと、生と死に対する感情が一言で言い表された良いセリフだと個人的には思っております。
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(。>д<)感想ありがとうございます めちゃめちゃ嬉しいです こんな深く感じてもらえるなんて感無量であります この物語の世界の理不尽さと、正義の違い、むさしさなんてのを書いてみやしましたが 嬉しいす。ありがとうございます 式使い通り、続いて壮大な展開なりますが( *´艸`) 風呂敷ひろげたわりに、こじんまりした話になってますが 良かったらまた読んでもろたら嬉しいです
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