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ぴょんこ
りかりー
2020/9/11 13:32
続き わたしを守るように唸り牙をむく銀の狼に芝くんは、 「来たな」 口の端を上げると、突然、印を結び呪を紡ぎ出した。 胸元から札を取り出して銀の狼に投げつけ、それは火の塊になって狼を襲った。 狼はそこから動かない。 そして気づいた。動けば火の塊はわたしに当たるかもしれない。だから避けないって。 「避けて!」 焦げた匂いがした。 芝くんは次の札で風の渦をぶつけてかまいたちで狼の皮膚を切り裂いた。 血が……足元にぽたりと落ちた。 わたしは硝子を叩いて叫んだ。 「やめて!!」 叫んだ瞬間に芝くんの張った小刀の結界が音を立てて砕けた。 「なっ!?」 驚き目を剥いた芝くんに、銀の狼はわたしの襟を噛むと大きく飛躍して縁側まで跳んだ。 わたしをそこに置くと、銀の狼は一気に芝くんの喉元に噛みついた。 寸前に出されたのは、光る刀身。 力は狼の方が上、狼の鋭い爪が芝くんの肩にくい込んでいく。 くっ、 「縛!!」 芝くんの放った光の呪に銀狼の動きが止まった。 それでも抗う銀の狼から電気が迸ってバチバチと音を立てる。 銀の狼も芝くんも傷だらけになってた。 「もうやめて、お願い!」 駆け寄ったわたしに、銀狼はよろよろと立ち上がり口から血を吐きながらも人間の言葉を紡いだ。 「……ずっとずっと見守ってきたんだ。……おまえは誰にも渡さない!」 銀の狼はわたしを見つめた。 「俺はおまえが小さな頃からずっと……」 「ふざけるな!人間を喰らう妖しのくせに!!」 芝くんが立ち上がって叫んだ。 指で空中に呪を書き光の矢を生み出し銀の狼へと放った。 最後の一撃。 その矢を狼が受ける寸前、わたしは銀の狼の胸元へと飛び付いた。 グシュッ 光が弾ける音がした瞬間、背中が火が着いたように熱くなった。 腕の力が抜けてく。喉の奥から苦いものが込み上げてくる。 「どう、して」 「……いつだって、わたしを守ってくれてたの」 幼くしてお父さんお母さんを失くした時、夜になると朝までそばにいてくれた。 近所のお兄さんに連れていかれそうになった時も現れて守ってくれた。 階段から落ちそうになった時、 海で溺れかけた時、 そして、今。 「……お兄ちゃん、なんでしょう?」 続く
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ぴょんこ
2020/9/11 17:01
ミニ話も、いつも楽しく読ませていただいてます。ありがとうございます。
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りかりー