【コメント】世界を救わない勇者

ぼくは勇者になるんだっ

世界を救わない勇者

初めてこちらでレビューさせて頂きます。最初にタイトルだけ見て、「勇者に憧れた少年のお話かな？」と思っていましたが、それとは少し違った小さな勇者の物語でした。カーディナル＝和名ではショウジョウコウカンチョウという鳥らしいのですが、日本に住んでいたらどちらも馴染みがありませんね。最後の写真以外でも見てみたくなって調べてみると――あら綺麗♪ アメリカではポピュラーな鳥さんなんですね。是非とも実際にお会いしてみたいものです。さてさてリアルなカーディナルさんのお話はこれくらいにして。本作は小さな鳥の中でもひと際小柄なポン太くんの成長の物語。心優しい両親と、タイプの違ったお姉ちゃん達に囲まれて育ったポン太くんは、どこかちょっと頼りなさげ。その事は自分でも良く分かっているようで、行動の端々に自信の無さが垣間見えます。それでも、一歩ずつ。両親の教えをひたむきに守りながら、段々と色んな事が出来るようになっていきます。タイトルの、『勇者』。一体いつ、どの場面でポン太くんは勇者になるのだろうと思いながら読み進めていました。しかしちょっとした危機はあるものの、ポン太くんを含めた小さなカーディナル達は最小限の守りに徹し、一向に勇者になる素振りを見せません。おや？　と思っていると……最後のポン太くんの独白で、なるほどなぁと強く胸を打たれました。そう、強敵と闘わなくたっていい。世界の破滅を救わなくってもいい。多くの命を助けなくっても、そこに確かに勇者はいるんだ。日々死に物狂いで生きている、誰よりも強く勇敢な勇者が。生きる事、生活する事、明日を迎える事。本文で書かれていた通り、私達はその毎日を当たり前の様に過ごしています。ですがそれが当たり前じゃない世界がすぐ近くにある。そんな過酷な世界でもなお楽しみながら今を生きている勇者たちに、エールを送りたいと思いました。頑張れ勇者！負けるなポン太くん！短いストーリーでしたが、別世界の物語を覗いたような感覚にさせて頂きました。ありがとうございました(^-^)

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