ある男性の人生が「泣く」をテーマに描かれる‼︎
 不思議な作品である。  作者はこれまで分かりやすいエンターテイメントを中心にしてきたが、今回はエッセーとも小説ともつかぬ奇妙な味わいの作品である。  かといってつまらないとか、意味が分からないというのではない。  むしろ作者の新しいジャンルへの果敢な挑戦であり、読者への挑戦であろうと受け止めている。  この作品を説明するなら、「泣く」という人間の普遍的な行為を語りながら、一人の男性の少しばかり波乱に満ちた人生を描く斬新な発想の作品と言って良いのかと思う。  主人公が「泣く」という行為を淡々と語る中で、彼の性格や思想、周囲との軋轢、その他、彼を形成する諸々の要素が鮮やかに浮かび上がる。  そして「泣く」という行為を通じて彼の人生の歩みが語られていく。  ネタバレになるので詳しくは控えるが、プロローグの後の最初のシーンとエピローグの対比が、彼の人間的な成長を物語り、読者に忘れられない印象と感動をもたらしてくれる。  発想の妙と独特な味わいの読後感で、多くの読者とコンテストの審査員を魅きつけることを願ってやまない。    

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