蘭圭堂には二つの顔があるように思える。
高橋多探さんは以前からフォローさせていただいており、作品・作者様ともに認知していた。 レビューの場にふさわしくないと知りつつ感想を書こうと思った経緯を包み隠さず申し上げると、先ほど拙作の感想をいただき、その知識に裏付けされた鋭すぎる指摘に北斗七拳を食らったかのごのき衝撃を受け、深い造詣を持っていらっしゃる高橋さんの小説はどのように描かれているのだろうと俄然興味が湧いた次第だった。 読んでみたところ、いやはや、執筆にかこつけて本作を読むのを先延ばしにしていたのは、まったく怠惰としか言いようがない。 新感覚のタロットリーダー×ミステリーだ。 舞台は岩手、一関(いちのせき)。 「魔術師は占わない」というタイトルの文字通り、蘭圭堂を営む笹川蘭圭は、我々が想像している占い師のように客を占うわけではない。 占いをしにきた客との出会いを因として、人との会話と行動するという、圧倒的リアリズムな根回しによって縁を導き出す。 もちろん占いの描写も、説明が文字でありながら、なるほどなと唸らされてしまう、作者様の考証に裏付けされたものだ(と思う)。 もちろんその着眼点も素晴らしいのだが、そこで働く人たちが魅力的だ。 そして三人全員、例外なく二面性を持っており、魅力が倍増している。 仕事をやめニートを謳歌し、ひょんなことから蘭圭堂のアルバイトとなった高槻くんは、自分の中に秘めている才能に気づいていない。その才能を発現しているとき、彼は別の彼となっている。 なにかしらの陰を抱えるキュウちゃんこと久常さんは、酒が入るとスイッチが切り替わる。私は蘭圭さんを投げ飛ばしたエピソードが大好きだ。 そして圧倒的存在感、物語の潤滑油たるタロットリーダー笹川先生。 彼の二面性(という言葉がふさわしいか自分でもよくわからない)が一番危うく感じる。 若い二人の従業員と話し、人生の先輩として導いたり、真摯に占い師として客を全力で占う一面。 病棟のプロフェッサーへ迫り、メアリネットワークの使用を求めてくる警官に厳しく迫り、また元自衛隊(?)としてかつての仲間と会話をする一面。 どちらも笹川蘭圭なのだろうが、同時に別人のような錯覚を受ける。 魅力的なキャラクターだ。 この感想を書いているときは真相解明直前なので、是非ともリアルタイムで追っていきたい。 続きがとっても楽しみです。
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素晴らしいレビューありがとうございます🙇 感激しました。 感想に負けないラストに持っていきたいと強く決意しました。 ちなみに友人以外で私の作品にレビューしていただいたのは雲灯さんが第一号です! へこたれそうなとき、読みかえしたいと思います。 ありがとうございました。
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