有月 晃

短編としてまず手に取り、次に一連の作品を通して楽しめる構成
「三年六組」シリーズ、現在公開されている四作品を拝読しました。 察するに、このシリーズはエブリスタの「超・妄想コンテスト」応募作品として、設定を共有しながらそれぞれの回のお題に合わせて書き上げられた短編なのでしょう。 それらの短編のうち、最も印象深かった当作品にレビューを寄せます。 物語自体は、シンプル。 主人公達は、十代の日本人。 ある日、幼馴染の一人が亡くなります。 小学校時代のクラスメイトが泣き崩れる中、営まれる葬儀。それぞれ帰宅の途に就いたその夜、亡くなったはずの本人が彼らの自宅を順に訪れて秘密を明かす…… という感じで、クラスメイトそれぞれの視点で物語が描かれます。 さて、当作品の主人公は、この亡くなった人物(佐倉弥生、という名です)の親友の一人。彼女のことを「やっちゃん」と親しげに呼ぶ、その心中はなかなかに複雑だった模様。 若やいだ時期に特有の好悪ない交ぜになった感情に、郷愁を誘われました。 また、この一連の短編の設定はファンタジー色濃いものなのですが、ごくありふれた学生生活にあって、世界の仕組みをクラスで唯一人だけ垣間見ている「やっちゃん」の言動が物悲しくも、物語への興味をそそります。 他の三作品も「超・妄想コンテスト」のお題と合わせて鑑賞すると「なるほど……」と感じ入らずにいられない物があり、こういった流れで物語を紡いでいく著者の手法は是非取り入れさせてもらいたいと思います。 このレビューを目にした方、未読でしたら一読の価値有りと申し添えて、〆にいたします。 著者はこのシリーズの他に長編も公開しておられるので、そちらにも期待です。
1件

この投稿に対するコメントはありません