夏時間

彼は落ち葉のような男《ひと》だった。か細いけど、どこか温かい。そんな感じのする人だった。私は彼と歩いている時幾分かの照れ臭さを感じながら彼に言ってみた。 「あなたって落ち葉のような人ね」 私の言葉を聞いて彼は落ち葉のように微笑んだ。 「そんな風に見えるかい?確かに落ち葉は焚き火に使えるし、その落ち葉で焚いた火は君の体と心を温めるかもしれない。僕も君にとってそんな人になりたいな」 彼の思わぬ言葉に私は照れて目を伏せた。そして勇気を出して彼に告白しようとして顔を上げたら、彼が目の前から消えていた。私は周りを見渡して彼を探した。いない、どこに言ったの?その時足元の方から声が聞こえた。私が声のした足元の方を見ると彼が地面に寝そべって私を見つめていた。私は驚いて彼に尋ねた。 「突然どうしたの?そんなところで寝そべって」 私の問いに彼は答えた。 「落ち葉は踏みしめるもんだろ?僕は君の落ち葉になりたいんだ!さあ僕をそのハイヒールで思いっきり踏みしめておくれ!さあ早く僕の体中踏みつけてくれ!」 私は寝そべって恍惚の表情をしている彼をまたいでさっさとその場から去った。
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