倉田京

教室から転げ出てきた彼は、もう先程までの彼ではなかった。目の焦点が宙をさまよい、なにかブツブツとつぶやいている。 『何を見たのか』という私達の質問を一切無視して、つまずきながら下駄箱まで一目散に駆け始め、そのままこちらに目も向けることなく夜の闇へと消えていった。

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