西 東

危うさと強さ。
光景も心理情景も、しっかりと丁寧に描写されていて読みごたえがあります。 心の中に揺れ動く繊細な感情の喜怒哀楽の表現が、それぞれの登場人物の性格や置かれた環境の違いに因ってきちんと表されているので混乱する事もなく感情移入しやすかったですね。 正義や普通と言った考えを、個々の間でぶつけ合うシーンは痛々しさすら覚えるものでした。 幻想的な、金魚を眺める場面から始まる不思議な水中を泳ぎ進み行く描写には幻惑される様な美しさもありますし、まとわりつく水の冷たさをも感じます。 その幻惑さはクライマックスの金魚姫と対峙する場面で一番強く感じられ、為に金魚姫の恐ろしい程の美しさも想像できました。 友達を取り戻すまでの痛々しさがあっただけに、その後の縺れた感情がゆっくりと解どけて少しずつ好転して行く様子も良いですね。 ただ怪異は一つではないとする終わり方が、緩んだ緊張感を再び引き締めて今後どうなるのかと気にもなります。 突然の感想を失礼致しました。 長編の完結おめでとうございます。
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