九崎冷水

書き始めたばかりということで改善すべきところも多く見られましたが、シナリオを作る才能はそれでも十二分に感じられました。本レビューにおいては評価すべき点と改善すべき点を順に話させて頂きます。 評価すべきところとして、私は登場人物に無駄が無いところを挙げさせていただきます。 主人公のロジャン。彼の『日常』を彼との会話ややり取りで表現するガキ大将のグマス。森で起きた事件に深くかかわりのある獣人の王牙。国王の血を引くティーラは、舞台となる国全体のことを表現する役割を担える可能性を秘めています。 このように名前のある登場人物それぞれが、この作品の世界観を伝える役割を担っています。つまりは登場させる意味を内包している。加えて性格の違い、魔物の出現に対する行動の違い等でキャラの描き分けも出来ています。 また、グマスについて只の乱暴者で終わらせず、女の子に優しかったり勇敢だったりと意外な一面を見せることでキャラクターを掘り下げる姿勢にも好感が持てました。同様の評価点として、憶病な王牙を憶病だからこそのやり方で活躍させているところも良い。 つまりは、不要なキャラクター、ないがしろにされているキャラクターがいないのです。書き始めでここまで出来ているのであれば、今後の成長に期待せざるを得ません。 改善すべき点ですが、文章や心理描写に説得力が無い部分が所々存在するのが気になります。例えば96pの「もちろん透けて通り抜けて……」という言葉、何故「もちろん」と言い切れるのか読み手には理解できません。おそらく幽霊なのだからすり抜けて当然、ということを言いたかったのでしょうが、すり抜けると明確に分かるのは次のページです。この時点ではまだその存在が「物質をすり抜ける幽霊」だと分かっていないはずです。 ・この点を今後改善していく意志があるならば、先ず客観的な視点から自分の話を読み返すことで、振り返っていくことを推奨します。つまりは頭を空っぽにした状態で一から自分の話を読んでいく、ということです。こうして一時的に自分の作品のストーリーを忘れた上で、自分の書いた文章に沿って順番に情景を思い浮かべていってみてはいかがでしょう。そうすれば私が見落とした改善点が他にも見つかるかもしれないだけではなく、更に良い文章表現を思いつく可能性も高いです。
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