todaka

 良い物語は、正しく矛盾していなければならない。  これは私の創作に関する座右の銘だ。 「正しく矛盾する」とは何かと思うだろうけれど、物語を面白くしようと努めれば、必然的に、お話には矛盾が生まれる。  娯楽小説の一大勢力である「推理小説」なんかは、正しい矛盾の宝庫だ。  たとえば「密室殺人」 「密室」なのに「殺人事件」が起きてしまった。これは矛盾である。矛盾しているからこそ、読者は引きつけられる。  物語の主人公の役目は、この矛盾に立ち向かうことである。推理小説であれば、名探偵が現れて密室の謎を解き、犯人を捕まえる。矛盾の解決が鮮やかであれば、読者は満足して本を閉じるだろう。  ちょっと前に流行した、無能もの(※世間から無能、劣等生だと思われている人間が、実は世界の命運を左右する実力者だったという話)も、世間の評価と実力が矛盾しているからこそ面白味が生まれる。  一方で、矛盾を起こすことがゴールになっているジャンルもある。  青春小説のように、登場人物の成長がテーマの話であれば、物語の始まりと終わりでは、人物の行動や発言に矛盾があるのが普通である。「自信のない少年が、自信に満ち溢れた大人になる」のは、王道の展開だろう。  また純文学やホラー小説では、あえて矛盾を解決しないまま終わるという展開もよく見られる。その方が余韻があるからだろう。  正しい矛盾は、読者に興味を抱かせ、次のページを読みたいと思わせる。  だから、私は今日もまた、次回作のプロットを書きながら考える。 「この物語は、正しく矛盾しているといえるだろうか?」と。

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