そこに漂うものを描く
蜜原力(©昭島さん)に関しては、そろそろ検定試験を受けられる位になったと、勝手に自負しています、多分w この作品は、架空の秋葉原を戦地としたゲームや、己の肉体をデジタルで変容させるVtuber、はたまた商品の価値操作する工作員など、共通して「実体として捉えにくいもの」がフォーカスされています。 これが80年代であれば懐古的SFとなるのですが、2021年コロナ禍の今、全て存在しておかしくないものです。いつか人間は肉体を捨てる時が来るでしょう。 本作から見える景色は、もう既にあるものです。 そして、オンライン虐殺ゲームが、テロ等のシミュレーションとして利用されていることも。 人は見えないもの、目立たないもの(=作為的に目立たせて盲目になっている)に鈍感です。爆発的流行しているウイルスへの警戒すら、ろくに継続出来なくなっていることで明白ですが。 危機への気配を感受する人々の能力が脆弱になっていると、本作感じ取りました。※個人の見解です。 蜜原さんの小説は、テーマである対象物を登場させずに、その気配を描かれます。 『駿河台トライアングル』では、〈選挙〉カーの騒音から逃れるため、古書街をいく主人公が今と過去を行き来するストーリーですが、〈選挙〉カーの描写は一度も出てきません。だからこそ、登場人物を取り囲む状況とそこに流れる不均衡な空気が、文章から漂います。 物を物そのままとして書くのではなく、そこに漂うものを描く。 創作物、とりわけ小説に許された力だと、私は思っています。 とは言え、筆力あってこそ。 〈物語〉ではなく〈小説〉を書く蜜原さんだからこそです。こればかりは羨ましがるなど愚かなので、素直に愉しみたいところです。 微かに漂う気配、予兆、英熟語で『something in the air』。 それを切り取り印字した小説を、読み終わって現実へ戻った時、研ぎ澄ます本能を取り戻した気持ちになります。 もちろん、主人公・巽が依頼された探偵のように、ハードボイルド小説のように読むも一興。 かのん、凜子、そして新登場のるるどさんの魅力を味わうも良し。 那由他のnoteから社会を見る手立てにするメタフィクション(※個人の見解です)としても面白いですよ! とりあえず困ったのは、本作連載の影響で、サバイバーな女の子イラストを描く衝動に駆られたことです(笑)
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誤字訂正です『駿河台下トライアングル』 誠に失礼しました、申し訳ございません!!!
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 蜜原力てw    しかしいつもなら、そんなにハードルの高いものを書いていないんですよ……! とか言えるのですが、今回はわたしのなかの混沌をそのまま書いちゃったので、蜜原力もやむなし……でしょうか。    そうなのですよね、もし80年代であれば「Something~」に書かれたことはなんだかレトロスペクティヴに受け止められたのかも。  肉体を捨てる、といえば、「トランス・ヒューマニズム」の世界を彷彿とさせます。  最終的には意識だけをサーバに移す「マインド・アップローディング」の世界とか……。    でも実際にトランス・ヒューマニズムの研究の本など読んでるとわくわくするんです、これが。    
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