暗く冷たく恐ろしい小説!武藤氏の小説はどこに行くのか…
 果てしなく暗く冷たい。  そして美しい幻想的な小説である。  小説全体に流れる体を凍らせる冷たさは、  「もうやめてくれ」 と耳を塞いで叫びたくなる恐怖を運んでくる。  この冷たさは、会話の部分にも現れている。  主人公と紳士ではない。  主人公の父親など脇役たちの会話の奇妙に杓子定規な表現の背後に隠れるゾッとするほどの悪意を纏った冷たさは、読者に生理的嫌悪感を抱かせ物凄くイヤな気持ちにさせる。  終盤に登場するイタチの存在など細かいところまで作者は計算しており、恐らく最近読んだ作品の中で最も絶望的な気分になる恐ろしい作品であり、鬼面人を驚かすこけおどしのホラーの及ぶところではない。  未曾有のコロナ禍。  武藤氏も多くの人々と同じような辛酸を舐めた方思う。  そしてこれがコロナ禍に対する武藤氏の文学者としての答えなのか。  武藤氏の小説はこれからどこに行くのか⁉︎  私は興味深く見守っている。
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