todaka

 漫画家の三浦建太朗氏が亡くなられた。まだ54歳だった。  漫画読みの人には「ベルセルクの作者」といったら、わかるだろうか。  何か言わなければいけないと思ってキーボードに向かっているけれど、いったい何から話せばいいのだろう。  00年代の前半、私は企画立案能力の優秀さで頭角を現し、それなりに知られる存在ではあった。  その当時、お話ができた漫画家や小説家、ライターはたくさんいた。その中には、三浦氏がいた。  私は、一度だけ三浦氏にスタッフとして誘われたことがある。三浦氏からも気に入られていたし、何より、私はベルセルクのファンだった。  私が立案した物語の多くはダークファンタジーだったが、その下敷きには、間違いなくベルセルクの影響がある。私なくしてはこの世に存在しなかった漫画や小説はたくさんあるが、その私も、ベルセルクの影響がなければ決してそれらの物語を立案できなかっただろう。  しかし、私は三浦氏の提案をお断りしてしまった。  スタッフになってしまったら、作品としてのベルセルクを楽しむ側になれなくなる。私はそのデメリットを考えて、せっかくの勧誘を断ってしまったのである。  私はそれから2011年にかけて多くの漫画や小説を立案したけれど、ときどきふと考えることがある。  もしも、あそこで提案を呑んでいたらどうなっていたか?  私が2004年から2011年にかけて、何人もの漫画家や小説家のために立案した物語は、すべて世に出なかっただろう。また、デビューが遅れる作家も多かっただろう。  その代わり、ベルセルクはもっと早く進んでいたかもしれない。完結させるには時間が足りなかったかもしれないけど。  では、どうするのがベストであったのか?  答えはわかっている。  いくら考えても答えなどないのだ。  別の選択肢をとっていたなら、今ごろ、別の疑念に悩まされていただろう。結局人は自分が選んだ未来がベストだろうとなかろうと、ただ受け入れることしか許されない。  時間を巻いて戻すことなどできないのだから。
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