遺構
 当時、私も小さく、被災県の中でも比較的内陸に居住していた私は津波の実感はありません。しかし、怯えていた余震や数日過ごした避難所の事はよく憶えています。  この物語の前半部分で語られている内容は、事実とも言えるエピソードも織り交ぜ、痛切なまでにリアルな描写も込めて表現されており、まるで震災遺構を見学するように、心に迫る迫力がありました。  再会した同級生のトラウマは願いと祈りの中にあるものであるし、その災害を経験した人間の誰にもある復興祈念の想いの中で、共有し忘れない事が大切であると、私たちに訴えかけている文章だと思いました。  力強く感情的に描かれた文章に、寂しさと体温のどちらも感じた、名作短編小説。
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