船木千滉

梅雨が明けたかと思ったが実は中休みらしく、久方ぶりの雨にほっとする。 大きな団地にしては緑溢れる土地柄、中でも今紫陽花の花が艶やかに咲く。 この花、六つ七つも名があるが、中でも私が好きなのは「よひら」である。 長崎は思案橋の路地裏にある忍ぶ坂、その途中に、同名の割烹料亭がある。 坂から鄙びた数寄屋門を潜れば、小さな灯篭に浮かぶ石畳が、母屋へ誘う。 気鬱になるこの時期だからこそ、あの庭に咲く、紫陽花の花は格別だった。 かつて紫陽花に、愛妾の名からオタクサとした独人の想いも、さもあらん。 あの街もかつて世界に開かれ、七つの海を越えて人が集い栄えた街である。 この時期、五輪に人が集うなら是非もなし。まずは当面巣籠りに徹するか。 船木
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