昭島瑛子

最後まで響き続けるタイトルと作者への信頼
「あきらめきれない恋をした」 このタイトルを初めて見たときは「フラレても何度も告白しちゃう女の子の話かな?」などということを考えました。 本作の主人公であるハナちゃんはそんな自分本位な女の子ではなく、心優しくひたむきな女の子であることがわかってくるうちにどんどん物語に引き込まれ、ハナちゃんを応援したくなります。 タイトルの「あきらめきれない」はハナちゃんが病を抱えていることが分かるにつれて意味が変わってきます。 物語の随所に登場し作品全体を通じて響き続ける「あきらめきれない」という言葉が、読み始める前と読了後ではまったく違う印象を与えてくれました。 個人的な話で恐縮ですが、本作を読んでいる途中で作者のリコさんご本人から「長編はラストで救いを書きたい」という話をうかがっていました。なので、ハナちゃんの病気が悪くなってくる後半でも、「リコさんがハナちゃんを悲しい目にあわせることはないだろう」と思っていました。 ところが、エピローグを読み進めていてもハナちゃんが助かるかどうかがラスト12行くらいまで分からないのです。最終ページをスクロールしながら「大丈夫だよね? 助かるんだよね?」と祈りながら読んでいました。 作家として「読者に先を読ませない」というのは重要な技術です。救いのあるラストを書くリコさんだと知っているのに、最後まで救われるかどうかを事前に悟らせないという筆力に脱帽しました。 「この作者は救いのあるラストを書く」というのは読者からの信頼につながると思います。 特にキミノベルのようにジュニア向けに書かれた作品なら、「この作家の作品では主人公は必ず救われる」というのはとても重要ではないかと思いました。
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