はーこ

想い合うほどに遠ざかってゆく、天使と悪魔の切ない物語
一気読みさせていただきました! 絵本を読んでいるかのような優しい文章なのですが、その内容はとても深いものでした。仕事熱心な天使のウィングと、まったく何ものにも興味を示さない悪魔のヴィオレ。このふたりが出会い、恋に落ちるお話なのですが、展開が独特。 というのも、こういったお話にありがちな『種族の違い』だとかは、正直あまり重要ではありません。何故なら、天国に住む者は地獄へゆく者を拒まず、地獄に住む者も、望むなら天国へやってくることが可能な世界だから。 死者も自分の行く先を自由に選択できるという設定の独特さには驚かされました。そして、死者も天使も悪魔もその自由な自主性を許されているがゆえに、悲劇は起こってしまったのですね…… 一目見て、お互いのことを忘れられなかったふたり。ウィングは自ら翼を引き抜いて地獄へ、ヴィオレは翼を生やし天国へ行くという決断をします。その先に、想いびとはいないとも知らずに……こうしてウィングは悪魔となり、ヴィオレは天使となります。なんというすれ違いでしょうか。ウィングに会いたくて天国へやってきたのに、努力をしても、予期せず死者を地獄へ行かせてしまい、そのせいで仲間の天使たちには厄介がられる。心身ともに疲弊していくヴィオレの様子は、本当に見ていられませんでした。 一方ウィングも、地獄にヴィオレがいないと知り、次第に優しかったその心を歪めていきます。やがてヴィオレを手に入れるためだけに天国を乗っ取ろうと画策するなど、恐ろしい考えを抱くようになってしまいました。 こんなにも想い合っているふたりなのに、お互いの名前すら知らないんですよね。この先、疲弊したヴィオレは、闇堕ちしてしまったウィングに捕まってしまうのでしょうか……まったく先が読めません。
1件

この投稿に対するコメントはありません