祇光瞭咲

等身大の彼女らによる心温まる成長譚
 本作はファンタジーでありつつ、物語の主題は一貫して等身大のキャラクターたちによるヒューマンドラマとなっています。魔機の修理を請け負うルージュさんと、そこへ研修に来た視点主のシャル。彼女たちが出会う人々との、魔機を巡るドラマが各章完結型で繰り広げられます。  まず、「魔機」という存在がいいなぁと思いました。素朴な生活の中に溶け込んでいる魔法を原動力とする不思議な品々。その意匠や仕組みが丁寧に描写されているのですが、これがまたワクワクするんだなぁ…  人々は魔術を駆使できるのではなく、技術の一つとして取り入れているだけなので、魔機は万能ではありません。時にその修理方法はアナログを極めていたりします笑 それがまた味があってイイ…(*´▽`*)  ちなみに私は特に印刷機の魔機がお気に入りです。  続いて、何と言っても魅力的なのはキャラクター。みんな個性的でありながらも、人を思い遣る気持ちや優しさといった温かい側面が瑞々しく描かれており、じーんとさせられるのは一度や二度ではないはず。ロザリンドちゃんの強烈さも好きですが、やっぱりマーガレットさんが最期にすべてを持って行ったね…渋い…(*´▽`*)  こちらの作者さまは非常に小説の技量があるなぁと密かに嫉妬…じゃなかった、憧れているんですが(いつか脳みそちょっと味見させてください^p^)本作もそれが際立っていたように思います。  一人称小説の最も難しい点は情報の匙加減とかではなく、「視点主のものの見方、考え方」を徹底することだと思っています。その意味で、本作はまさにシャルが書いた物語でした。彼女の目線に合わせて描写が為され、完全にシャルの目と心を通したストーリーが紡がれています。そこには作者の存在を感じさせませんでした。すごくないですか?すごいんですよ。  盲目的なほどに真っ直ぐで、誰かのために全力で動こうとするシャルの姿には胸を打たれるけれども、やっぱりまだ未熟さが目立ちます。その一方で常に冷静に見えるルージュさんですが、彼女にも秘めた想いがあるわけで。二人の思想の違いが明確になったとき、彼女たちがどう成長していくのかが見所です。  読んでいる最中もそうだったけれど、むしろ読み終わってから思い返して胸が温かくなる物語でした。ヒロイン二人がまた新しい物語を携えてひょっこり戻って来てくれる日が楽しみです。
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