鷹取 はるな

費やす時間もスパイスの一種
本作品を読んで真っ先に思い出したのは、以前よく通っていたレストランのシェフの言葉です。 ラタトゥイユがとても美味しかったのでコツをたずねたところ、「三日間煮込んでいます」と、実に事もなげに教えて下さいました。 ――納得です。 そこまでではないにしても煮込み料理は時間をかければかける程、かけた分だけ美味しくなります。 味が馴染んでいくからでしょうね。 人とひととの間柄も又、同じではないかと私は考えます。 お互いに面と向かって逢っている時だけではなく、相手のことを想えば想った分だけその気持ちは深く濃くなっていきます。 つい「煮詰まり」過ぎてしまうと、後のちの修正が大変な点までもまるっきり同じです。 本作品の主人公である瑞貴には、その種の心配は無用なようです。 出張中である恋人の南条の帰りを彼の部屋で待つのにさえ、「いかに南条に気を遣わせないようにするか」を考えてしまうくらいですから。 そんな瑞貴ですが、帰って来た南条と一緒に食べるための料理を作っている最中にはそれなりに「やきもき」していたものと思われます。 アメリカの会話では煮込み料理の「stew(シチュー)」が、そういう意味で用いられているそうです。 南条が帰宅して二人して食べた料理が一体何であったかは、是非ともお読みになって確かめてみてください。 さぞかし美味しかったでしょうねぇ・・・・・・
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こんな短い、単なる日常のなんということもない話に、とても丁寧な感想をいただき恐縮です。本当に嬉しいです……。 どうもありがとうございました!
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毎度毎回、深読みし過ぎの感想にそう言って頂けてありがたい限りです。 こちらこそ、どうもありがとうございます<(_ _)>
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