鷹取 はるな

極めてまれで、しかもこの上なく美しい光。
本作品の冒頭にはオーロラという名の光の幕が掲げられ、それが開くかの様に物語は始まります。 以下、作品中では度々この光が姿を現します。 ある時は主人公のカドの想い人であるハルの象徴として、又ある時はカドの将来の夢そのものとして――。 実に様々な色合いを示してくれます。 それらの光の描写の細やかさと鮮やかさとが、作品を彩り輝かせています。 どの様に語られているのかは、是非ともお読みになって確かめてみて下さい。 それらの眩しさについ、何度も何度も目を細めてしまいました。 本作品はカドとハルと二人の目線、つまり相互視点で話が進んでいきます。 しかし、二人のことだけしか記されていないわけではありません。 カドとハルとはけして、二人きりで生きているわけではないのです。 二人が通う学校の先生たちや共通の友人たち、そしてお互いの家族たちがそれぞれ登場します。 周囲の人々が二人を取り巻き、二人を作り出しています。 ラストへと向かい、その現実がよりくっきりハッキリと表されてきます。 彼らもそれぞれそれに向き合い、受け入れます。 この点に、二人の頼もしく確かな成長を見出すことが出来ました。 オーロラとは「南、北両極地方で空中に幕を下ろした様な薄い光が現れる自然現象の一種」です。 私にはタイトルに掲げた様にも思われて仕方がなかったです。 原義は『夜明けの女神』の名であり、物事の始まりや黎明(れいめい)を表します。 「初心な男子高校生ふたりの丁寧でじれったい恋&成長青春物語」(あらすじより)にはこれ以上とない、とても素晴らしいモチーフだと感じました。 深読みを失礼致しました。
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