あーる

ちょっぴり切なくて、心がじんわりあたたかくなる“元カレ“たちのお話。
タイトルからどういうふうに転がるお話なのだろう?とワクワクしながら読み始めました。 すると、主人公と一緒に一ベージめで、えっ!!!となり、読み進めれば予期せぬことに混乱、当惑し、そして最後にじんわりと心あたたかくなるとっても素敵な物語でした(*´▿`*) 短いお話の中にぎゅっと詰まったそれぞれの想い……二人の蓮さんの“元カレ”の会話で浮かび上がってくる彼らの終わった恋愛事情。細かいエピソードが書かれているわけではないのに、その時、彼らに流れた時間、想いを手に取るように感じられます。それらがとても愛しくて……悲しいわけでなく、切なすぎるわけでなく、ただあたたかい涙が込み上げてきました。 一番感じ入ったのは蓮さんの人物像。お話の中では断片的に語られるだけなのですが、彼のマイペースだけど頓着のある性格、けれどどこか隙があるような容姿や仕草がありありと目に浮かんできました。(これは勝手な妄想です(笑)) 私の脳内にはアロハシャツを着たやわらかい笑顔を浮かべた“蓮さん”がばっちりと存在しています。それは作中の彼らの蓮さんに対する愛情が伝わってきたからなのかなと思いました。 佐藤さんと蓮さんの関係を知れば、蓮さんはずるいひとなのかもしれないけれど、佐藤さんはきっとジュンジュンを好きな蓮さんが好きで、だから佐藤さんを通して感じる蓮さんは憎めないとてもチャーミングなひとに感じられるのだろうなと思います。 ジュンジュンひとりで遺品整理をしていたら、きっと悲しさや後悔だけが大きくなったかもしれない。けれど二人で思い出を共有できたことで、あの時はかけがえのない時間を過ごしたんだなと思えるような、そして明日からもまた何気ない毎日を穏やかに過ごして行ける……そんな気持ちがふくらむとても素敵なエンディングでした。 随所のビールの描写もとても効果的に感じられます。ビールのように、大人のほろ苦い恋。でも一緒に飲み会う仲間がいれば気分も上がる。 読了に清々しい爽やかな風を感じるとてもとても素敵なお話でした!!!
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