みやこわすれ

悲しくも恐ろしい家族の絆
私の地元は、田舎のせいもあるのか「無理心中」をこじらせた「殺人事件」が多いです。いずれも、興味本位からか、実際に「出る」との噂が絶えず、現場は、心霊スポット的な扱いを受けてはいますが、事件の真相を知ると、悲しみと痛み、人間の業の深さに心が震えてしまうほどです。 本作を読みながら、私も、悪夢に出てくる匍匐前進する男に声援を送っていました。 ラスト近く、悪夢の真相が事件の背景とともに明らかになるにつれ、なんとも言えない想いに駆られ、涙がこみ上げてきそうになったところで、ガツンと衝撃が走りました。 情景描写の上手さは、もちろんのこと、それ以上に、オチが…。あぁ…。 そして、冒頭コメントしたように、一家無理心中の結果、永遠に救われないまま、当時のつらい状況とともに現場に取り残され、何度も何度も同じことを繰り返すのだと。 「地獄」も「天国(極楽浄土)」も、あの世という別世界にあるのではなく、むしろ、この世で体験することなのかもしれないと。固定観念を覆される思いがいたしました。 心中なんてするもんじゃあないですね。 地元でも、最悪の心霊スポットとなっていることを思うと。 地縛霊になってしまった以上、どんなにがんばっても、どんなに助けを求めても、誰も助けに来てくれないどころか、生きている善良な人間を、道連れにするなんて、悪さをするにいたっては、もう、成仏なんて無理でしょうから。 この男以外の小さなお子さんと奥さんは、冷たい川底に沈んだままなのでしょうね。遺体は、あがっても、意識はそこにあるのでしょうから。 この度も、怖い面白い、考えさせられる作品をありがとうございました。 今年は、酒見様のおかげで、楽しい一年を送ることが出来ました。 今年は、あと何回読めるかな? いつも、作品楽しみにしております。
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毎度、ご丁寧で深いレビューを頂きまして、誠に有難うございます。またペコメも頂きまして恐縮です。 実際、心中って要は殺人事件ですね。ふと、横溝正史の本陣殺人事件で、これは心中事件ではなく、憎悪に満ちた普通の殺人事件なんです、と金田一耕助が締めくくる場面を思い出しました。これを持ち出すまでも無く、まだ是非の判断もつかない小さな子供を、それも自分を頼りにし、愛してくれている子供を道連れに死ぬ、というのはどんな事情であれ、それは殺人に過ぎないと思います。 と言いつつ、書いていて自分でもこの父親の後悔や行動に哀れを感じたのも事実です。地縛霊になってしまったのは一家四人ですが、父親は妻子を巻き込んでしまっ

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