鷹取 はるな

プロフェッショナルの仕事
(以下、エピソードタイトル「マッサージ」、「金髪」までを読んでの感想となります) 本作品の主人公で語り手でもある紬は、あらすじに記されているように男性専用癒しサービスのスタッフです。 私は拝読していて、彼が予約客に「癒し」を提供するのに同行しているような心持ちに陥りました。 「オムニバス形式のため基本『1話=1人の客の話』」なので、客が紬へと求める「癒し」は一人ひとり異なります。 事前に情報として【要望】を知らされているものの蓋を、指定されたホテルの部屋のドアを開け、実際に客と会ってみなければ分からないこともあるのでしょう。 紬はけして多くを語りたがらない客の言葉や何でもない態度、ちょっとした仕種等からさらに【要望】を読み取ろうとします。 私にはその行為自体が「濃厚な絡み」のように思えて仕方がありませんでした。 覗き見をしているかの様で、ドキドキしました。 こう記すと紬が有能且つ、実に仕事熱心で献身的な「癒し手」のように思われるかも知れません。 しかし、「それも又違うのではないか」と穿った見方をしてしまいました。 今のところ、紬は自分のことを全く語っていません。 「話の語り手だから」と言い切ってしまえばそれまでなのですが・・・・・・ いくら「仕事」とはいえ、個人的な思いがまるでないとはとても信じられないのです。 少なくとも、何かしらの「きっかけ」はあったはずです。 紬の「癒し」とは一体何なのか――。 ホテルの部屋を颯爽と出て行く彼の姿が、仕事ぶりが鮮やかであればあるほどに気になってしまいます。

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