はーこ

魔法とはなにか。退廃的な架空の現代ダークファンタジー
「結婚をしてください」 将来の幸せを誓い合うはずの言葉とは裏腹に、告げた朱里も告げられた真斗も、まったく嬉しそうな雰囲気ではありません。それどころかふたりのやりとりはひどく他人行儀でよそよそしい。 そのわけは、真斗が兄の犯した罪を償うために、被害者である朱里に「なんでもする」と発言したことによる契約結婚なのだとわかる冒頭は、なんとも退廃的な世界観への入り口でした。 魔法の存在する世界ですが、登場人物の名前も含め、文明は現代日本に近いものを感じますね。 ふつう魔法と聞けばわくわくするものですが、そんな心を真ん中からへし折るかのごとく殺伐とした世界観です。魔法使いは戦争に行くもの。魔法は敵を葬るために使うもの。 魔法を使う対象は悪いモンスターではなく、同じ人間なんですよね。そのせいか、魔法という非現実的なものをテーマにしているのに、リアリティがすごい。 真斗の兄、シンが死神と恐れられ、災害とも呼ばれる事件を起こした理由はなんなのか、気になって気になってページをめくる手が止まりません。要所要所でほのめかされていたその真相が明らかになったとき、あぁ、なるほど、と。シンがその行動に至った経緯は納得できるけれど、それが正しかったかどうかを考えると、難しいんですよね。ただ彼らが生きる世界は歪んでいて、とても危ういものということだけはわかります。 家族を奪われ、自身も深く傷つきながら、怒りのやり場を求めて契約を突きつけた朱里と、受け入れた真斗。ふたりの『結婚』はまさにいびつな始まりでしたが、傷だらけのふたりの関係が、少しずつ変わろうとしています。ふたりがいつか心から笑い合える日が来たらいいな……と願わずにいられません。
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素晴らしい感想ありがとうございます……読みながら泣いていました(なんでだろう) ここまで読み取っていただけて本当にありがたい限りです、長い話を読み切ってくださり、ありがとうございます。 これからもよろしくお願いします。
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