Song for You and I
レビュー失礼します。  まずは、未完結でも参加できる 執筆応援キャンペーン「彼/彼女の裏の顔」入賞おめでとうございます!  総ページ数48ページ、エブリスタ的文字数換算にしてわずか30分強で読める作品にもかかわらず、そこに凝縮された人間ドラマは普遍的でさまざまな感情を呼び起こさせます。  作者様の作風的に、冒頭シーンで何がしか事件を起こすことで、読者の心を鷲掴む手法を取られていますが、本作でのそれは驚くなかれ殺人――。  これが衝撃でなくいったい何であろうという感じではありますが、その背景にある因子について考えるとき、被害者がはからずも加害者へと転じてしまう過酷な現実に、多かれ少なかれ誰もがシンパシーを感じるのではと考えます。  もちろん、人が人を殺◯ことはいけないことであって、理由のいかんなくそれを実行した者は罪に問われる――それが現代の司法制度というものであり、これを犯した人間は相応の償いをしなければならない、だがしかし……いや、それでも。  音楽を愛する反町海斗は、親友である木下徹とストリートミュージシャンをしている。反町には類まれな才能があり、その前途は希望に満ちあふれていた――はずだった。しかし、その反町に人生を暗転させるおぞましい悲劇が襲いかかる……  司法制度には穴がある。〝人権〟を謳う者によって、本来裁かれてしかるべき者が罪を償うことなく自由を得てしまう――そういった理不尽は現実に数多く存在している。  第三者から見ても憤りを感じずにはいられない無情ともいえる司法判断に、当事者である反町は自らの手で復讐することを決意、結果的に新たな被害者を生んでしまう。  その被害者にも家族があり、彼女は悲しみのあまり心を病んでしまう……正義とは何なのか、あらためて深く考えさせられます。  主要人物をに共通しているのは、それぞれに大切なものを失ってなお、音楽を愛する心だけは消失させていない点。そこでまた別の普遍的テーマが語られるが、最終的には三者三様に救いがおとずれる――いつか真実があらわになったとき、彼らがどう対処するか一抹の不安を感じつつも、夕暮れの六本木を心穏やかに歩き進む反町に祝意を表したい気持ちになりました。素敵な作品です。オリジナルのL.ラッセルのバージョンと和訳 https://note.com/mizoko/n/n8867a16d02b5
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ことりはね様 拙作をお読みいただき、丁寧で的確なレビューまで賜りまして本当にありがとうございます。心より感謝申し上げます。 レオンラッセルのソング・フォー・ユーは名曲ですよね。ことりはねさんの超訳が入るとまたグッとくるものがありますね。
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