時矢

傑作! いや、名作!
回覧板という、ごくごく平凡な素材が、こんな生かされ方をしたミステリーって、かつてあったでしょうか? すごい発想。公園で死体が発見されたのを皮切りに、連続して起こる放火、殺人、また殺人。さらに義援金の問題まで起こって、展開も意表をつきまくり。そして何より、物語から浮かび上がる、地域の、ごく普通の、名も無き住人たちの怖さといったら!!! 匿名の集団の恐ろしさ。かつてはムラ社会と言われて、近年はSNSというバーチャルな「ムラ」がよく小説や映画で取り上げられるけど、昔ながらの「自治会」に着目したのがむしろ斬新! 背景にあるコロナ禍も、単なる背景ではなく、自粛要請を無視する勝手な人たちが問題になったりして、それもひとつの匿名集団の怖さだし、かと言ってファシズム的に管理が強化されるのもいやだしという、深い矛盾をはらんでいますから、この小説のテーマはそこにも通じていて、すごく現代的。まさにいま書かれるべき、かつ読まれるべき作品です! さらに、殺人と思われたのに実は自殺だったという解決は、普通、「なあんだ」の肩透かしですが、このテーマなら、納得。いや、それどころか、最も意外性のある真相と言えるでしょう。ほんとうによく練られていると思います! 掛け値なしに傑作だし、名作と言っていい。ここ数年で読んだミステリーの中で、ネット、紙の本とを問わず、最大級の衝撃でした。ありがとうございます!
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ありがとうございます。 2020年の3月くらいに、知り合いからいきなりUSBメモリを手渡されて「役員班長名簿と連絡網と回覧板の文書作って」と頼まれ、お礼に一万円貰うという、まさに本作主人公と同じ経験をしました。 私自身は役員ではないので会議には参加してませんが、自治会の意思決定プロセスやガバナンスの状態を側聞することができて、また、USBメモリには10年以上前の回覧板文書も残っていて、非常に興味深い体験をしました。 もちろん当該自治会では殺人事件も放火も起こってないんですが、ちょうどミステリを書いてみようと思っていたので、「この自治会圏内で殺人が発生したら…」と考えて、題材にしてみまし
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