あーる

“守る”とは… 立ちはだかる辛い過去。切なさと甘さ、優しさが交ざり合う再会物語。
『生きなさい』一ページめで知る過去に放たれたCommand。その意味を想像すれば、これから始まる波乱であろう恋路の切なさに胸を疼かせながら読み追うことになります。 雨の情景が描かれる今作。物語が大きく動くとき、合図のように降る様々な雨が登場人物の心情や出来事に重なり、より切なく物語の世界観が映し出される気がしました。 過去、一方的に別れを告げられ、大きな喪失感を誤魔化しながら過ごしていた志真君の前に現れた最愛の人。 再会した彼は別れの理由を告げることを拒みながらも、また一緒にいたいという…理由がわからないことで、前に進むことができない志真君の戸惑いを思えば、胸がきゅっと苦しくなりました。 domsubという第二性があるからなおさらで。彼らは本能的に強く惹かれ合い必要としているのに、一番大切な気持ちが繋がりきれない。読者は別れの理由を頑なに口にしない奏多さんへもどかしさを募らせます。 でも、読み返しながら感じたのは語られない奏多さんの想いでした。愛しくて仕方ない志真君を傍に留めおくことは、彼を苦しめ悩ませるだけ。それでも手放せない。きっとその葛藤に奏多さんは眠れない夜を過ごしてきたのだろう…そう想像すれば、奏多さんはよほどの覚悟で再び志真君の前に現れたのだとも感じます。 一番グッと心掴まれたのは、穏やかで自分の気持ちを押し込めるのことが得意な志真君が、奏多さんを激しく詰めるシーンです。誤魔化しをやめた志真君の姿に、停滞した時間が動き出す予感が膨らみました。 そんな志真君の芯にある強さと、奏多さんの揺るがない愛情が交じり合い溶け合ったとき、辛く悲しい過去さえも包み込んで、これからを語る二人にとてもあたたかい気持ちになりました。 また、志真くんを愛でたり支えてくれる職場の仲間たちも大切な存在。彼らがいたからこそ志真くんは強くなれたのだとも感じます。 domsubは特性上支配的言動が強くなるものですが、作者さんが描くdomsubは、その支配言動にさえ優しくて甘い香りが纏います。だから読者も多幸感に包まれていくのかもしれません。 名のままに真っ直ぐで一途な志真君。でも奏多さんも志真君に負けないほど一途だと感じます。 運命の悪戯に翻弄され、だからこそさらに強い愛情でつながった二人。 ラストシーン、私も職場の仲間たちと一緒に祝福をし、優しい気持ちに包まれるお話でした!
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あーるさん、この度はレビューという贈り物をありがとうございました!レビューを読んで、大袈裟ではなく涙が出ました。本当に細部まで読んでくださり、このお話を大切にしてくださったのだと分かって、幸せでいっぱいです。物語の中に散りばめた断片を全て拾って一つの宝石に仕上げてくださったような、本当に素敵な言葉の数々に感涙です。もうもう、どうこの喜びを表現すればいいのかわかりませんが、こんなにも2人を大切にしてくださる方がいるのならば物語の先の2人も綴っていきたいという思いが湧き上がるほど幸せでした。本当にありがとうございました(>人<;)
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