鷹取 はるな

よじれ、絡まり合う二重らせんたちが行き着くその先
(以下、P2~8までを読んでの感想となります) はて? 冒頭部分を拝読してすぐさま、「あらすじ」へと戻ってしまいました。 美術教師ではなくて、生物教師という設定だったかしら? もう一度よくよく読んで確認したら、美術担当で間違いなかったです。 そう――、『相良先生』こと相良識(さがらしき)は、事後に遺伝子についての独自見解をサラリと述べるような美術教師でなくてはならないのです。 そんな確固たる説得力が、本作品の主人公にして語り手でもある『ぼく』こと千紘の口調にはありました。 彼の口を通して『相良先生』の非凡な外見が語られていきます。 千紘はさすが美大を志すだけのことがあります。 その描写は繊細にして迷いがない、流麗な筆遣い(タッチ)を見るような心持ちでした。 それはそっくりそのまま、千紘の創造主たる作者様の筆力でもあると思います。 千紘をして「端正」と言わしめる相良先生も又、千紘を「美しい」と評します。 語り手が自分自身の外見をベラベラとしゃべらないのは物語の常、お約束です。 その代わり、相良先生が千紘へと働きかける一挙手一投足に読んでいるこちら側も否応なしにも期待が高まります。 物語のタイトルにも冠され、作中で語られる遺伝子といえば以前、とある生物学者のこんな言葉を聞いたことがあります。 「生物とは、遺伝子を運ぶ乗り物(ビーグル)に過ぎない」 なかなかどうして身も蓋もない、苛烈極まりない考え方です。 『相良先生』と『千紘』という美しい乗り物たちは一体、どこへと向かおうとしているのか――。 そして、どんな道筋を辿って行くのか――。 私が今回読まさせて頂いたのは、まさにその始まりの箇所でした。 未だに登場していない乗り物も、キャラクターもいて興味が尽きません。
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