狗夜 凛

短い記憶のなかで。
記憶障害を扱う作品は多いですが、この作品はその短さゆえに、『明かさず、答えず』に重きを置いた斬新な作品だと思います。 記憶障害を患った経緯も、夫との関係も、『明かさず、答えず』であるがゆえに、主人公の戸惑いや揺れ、不思議や葛藤がリアリティーをもって読者に襲い掛かってくる。 私は介助員が実母ではないか、という思いで読んでいましたが、それはあくまで私の個人的な想像であり、それについても明確な答えは得られませんでした。 序文から結びまで、『明かさず、答えず』を貫いてくれたおかげで、ラストシーンにおける純粋な愛が何よりも尊く感じられ、伏線をあえて謎として残す手法には感動さえ覚えました。 主人公については、自身への疑いがありながら、それを忘れてしまう病により、終始どこか漠然とした不安定さがあって、作品の質や神秘性を高めていたように思います。 理解者を得られ、とりあえずの穏やかな暮らしを手に入れた主人公ですが、心から晴れる日はないでしょう。 しかしながら、絵に描けるほどの笑顔が出せる素晴らしさ。 この作品における奥行きと愛の深さを堪能できました。 本当に素晴らしい作品でした。 余韻に想いを馳せながら、感想とさせていただきます。
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狗夜凛さん とても丁寧な感想ありがとうございます。 心底嬉しく思い、感動しました。 執筆活動の励みになります。 ほくほくしながら、午後の仕事も頑張れます! ありがとうございました😊
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