橘 実来

まさに愛の讃歌
本作を一読して感じたのは、作者であるさくらちゃんが今書きたいこと、書こうとしていることを8000字という制限のなかで、書き手として真摯に向き合い、心を込めて書いた珠玉の作品なのだということ。 ストーリー構成はほんのりミステリーテイスト。読者をちょっとした迷路に迷いこませてくるのです。けれどなんのヒントもなく、読者を迷路にぽんと投げ入れたりしません。それは彼女の流儀に反するから。 冒頭から張り巡らされた伏線が、ラストに近づくほど集約されていき、ああ、そうだったのか!というミステリー的読書の楽しさをしっかりと提供してくれるのです。 そしてなによりこの空気感。登場人物たちが奏でる優しくてせつないストーリーがメロディなら、それに寄り添うように通奏低音で流れているのは名曲『愛の讃歌』。それらがゆっくり混ざりあって溶けていき、ストーリーを奏でていくのです。 息を飲むラストは繊細な悲しみを帯びているにも関わらず、優しくてあたたかい光で読者の心をそっと包んでくれるよう。その感触はまさに"愛の讃歌”。作者の真摯さが私の心につたわった瞬間かもしれません。 読後きっと味わうだろうこの感覚を、ぜひぜひみなさんにも体感してほしいと思います。
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