夏時間

 『小幡さんの初恋』第四回:小幡さんと鈴木 抜粋 https://note.com/natujikan/n/nd02c3cf51dfd  小幡さんは家に戻るとお勝手に向かい、冷蔵庫から昼間に父親の誕生日のために買って置いたブランデーを取り出し、蓋を開けてグラスに注いだ。それから彼女はグラスを手に寝室に向かい、奥の仏壇に飾られている父親の遺影に捧げた。ブランデーは生前父が好きでよく飲んでいたものだ。そうしてしばらく彼女は黙ったまま父の遺影を見つめていたが、一息つくと蝋燭を灯して線香に火を点けるとゆっくり香炉にさした。それが済むと小幡さんは父に手を合わせていつものように毎日の報告をした。 「お父さん、お誕生日おめでとう。今日はね。凄いニュースがあるの。多分お父さんビックリするよ。いつも話してる同僚の鈴木さんっているでしょ?あの人実はお父さんと同じ年でしかも同じ誕生日なの。それ聞いて私凄いビックリしちゃった。でも鈴木さんは最初の面接の時そう言ったらしいのね。私すっかり忘れちゃってた。だけどなんでだろう。その時聞いて忘れていた事をなんで今聞いてこんなにビックリして嬉しくなるんだろう。今日の報告はこれで終わりです。ブランデー今夜はずっと置いておくから好きに飲んでね。でも飲み過ぎには注意してよ。お父さん昔からお酒弱いんだから」
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