倉橋

澁谷沓文学を探る
 澁谷沓氏の作品で私が好きなのは、現代の寓話ともいうべき『月の泪の夢語』『メグル・メグル・ロンド』の二作品である。『メグル・メグル・ロンド』は、多分エブリスタで読んだ一番美しい小説だと思っている。  ただ澁谷文学を振り返ってみるとき、この二作品があくまで澁谷氏の描く無数の作品群の中の一ジャンルに過ぎないことが分かる。  澁谷氏の短編作品の多くに存在するのは現実の世界と区分された「死」という世界である。  それはハッキリしたイメージを持って描かれるわけではない。  澁谷氏の描く「死」の世界とは非常に曖昧で虚ろである。  澁谷氏の厳選された言葉は流れるように読者の前から消え去り、決して「死」というものをハッキリと謳うことはない。  ただ読者の心に残るのは、「死」という深遠のイメージなのである。  今回の作品では、「死」に支配された説明し難い不可思議な世界が読者の前に広がる。  その世界は、非常に美しく純真に感じられるが、一方で永遠の恐怖と絶望という研ぎすまされた爪が隠されている。  そしてかげろうのように幻想的で爽やかでもある。  澁谷氏の多くの短編には、実はハッキリとした主人公は存在しないのである。  もしかしたら私たちが主人公と思っている存在自体、澁谷文学の世界を永遠に彷徨う「死」というもののひとつのイメージに過ぎないのかもしれない。  この独自の文学が澁谷沓氏の卓越した文学的才能から生まれたものなのか、それとも恐山、『遠野物語』に代表されるみちのく独特の「死」という風土が影響したものなのか、浅学菲才の私には論理的に解き明かすことが出来ない。  だが澁谷氏の多くの短編に流れるのは、いくつも姿を変える「死」というイメージを昇華させた優れた文学であることを信じてやまない。    
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倉橋さま✨ ウレシイばかりの御感想を頂戴仕り…誠にありがとうございます…✨ 作品本文の拙さがハズかしくなるほどのいつもながらの名文…✨ 真に感に耐えません…♪ 太宰氏の作品にも似たようなエピソードがありましたが、地獄の絵巻のようなもの?が、ワガ祖母の家にもありまして…私の死のイメージの原点も、それであるような気がします。 あ! あと…やはり祖母の所蔵の鬼子母神の絵もコワかった…💦 倉橋さまも近頃筆がお進みのご様子…♪ 創作に…その他の諸々に…充実の連休をお過ごし下さいませね〜✨
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