各務縁

タイトルの私的理解
このお話を読んで『身近な殺意』というタイトルに二つの意味を感じた。 一つは物語の通り、顔見知りが主人公を刺したこと。 でも私が強く感じたのは二つ目の私的想像『自分の中にもあるかもしれない殺意』。 もちろん実際に私が人を殺めたいという意味ではない。 だけど、誰もが一度は感じたり経験したりする『身近な』嫉妬心、 この加害者側の女の子くるみの殺意は、実は誰しもが抱く本当に人間の『身近』にあるものなのだ。 作者様がそう意図して書いてないとしたら申し訳ないけれど、私は読み終えてから再度目に入ったタイトルにそういう感想を持った。 だから怖いけど、だから共感もできる。 確かに美琴を客観的に見ると順風満帆にも見える。 だからこそその人生に影を落としている過去の経験が際立っている。 「どうして私なのか知りたい」ときっと被害者なら考えるであろう思いをずっと持ったまま、彼女の人生と一緒に文章が進む。 くるみのある種真っ当な殺意に、だけど、正面から肯定せずにいられるのは、 私がこの作者様の文章でいつも好きだと感じるラストの展開のお陰だ。 「当たり前と思うな」と、もしかしたら加害者に教えられたかもしれない、今在る自分の状況、存在理由。 美琴はくるみを許さないし、くるみも美琴を好きにはなれない。 だけど、その最後の彼女のくるみの行動への理解が、 それこそが、容姿でも、頭の良さでも、先生に贔屓されることでもなく、 くるみを妬ませるほどの、彼女の強さであり、輝きなのだろう。 今回も面白かったです、ありがとうございました。
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各務縁様 今、感動しております。 なんて丁寧で深いコメント。最高のプレゼントです。ありがとうございます。 数年前に佐世保の小6女子がクラスメイトを刺し殺した事件が忘れられず、設定を変えて書きました。そこまでするには余程時間をかけて、積もり積もったなにかがあるはずだ、と、考えても真相はわからず……。読んで楽しい描写もない物語なのに、深く読み込んでいただき、本当に嬉しいです。ありがとうございました。
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こちらこそ、今回も面白く読ませていただきました。 ありがとうございます。
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