昭島瑛子

恋愛小説マスターではない身には新鮮な恋愛小説
恋愛小説には「主人公が片思いの相手と恋愛が成立する過程を楽しむもの」というイメージがありました。くっつきそうにない二人がいかに距離を近づけていくのか、というのが物語の醍醐味かなと思っていました。 本作品の日菜と類くんは初めからいい雰囲気です。お互い想い合っているように見えるし、仲もいい。途中の困難になるのかと思った日菜と七瀬の関係も非常にスムーズです。 ところが、日菜と類くんの恋愛を阻むものは類くんの側にありました。閉ざしてしまった類くんの心を開こうと奮闘する日菜。恋愛だけではなく、日菜の人間としての成長も感じられます。 ラストに描かれていたのは、今は亡き咲良への想いを含めて類くんを受け入れる日菜の姿です。過去の恋人をすっぱり忘れて日菜にいく類くんではなく、咲良への想いを抱いたままの類くんを日菜が丸ごと受け止める。 恋愛の甘さだけではなく、過去の恋人を忘れられない感情の複雑さや人間の成長も描いた新鮮な恋愛小説だと思いました(もしかすると私が知らないだけで恋愛小説界では定番なのかもしれませんが)。 あと、本作品は章タイトルが秀逸です! 傷や病に関連する言葉が内容に非常にマッチしていて、リコさんのセンスにやられました。
2件

この投稿に対するコメントはありません