こういうのが見たかった、21世紀の『SFらしいSF』
その時代の『現代』に合った科学技術への知見を活かしつつ、物語のギミックとして有効に扱い、奇想天外をイメージに溢れた未来像を描いて見せる。こういうSF作品って、60年代やら70年代にはかなりあったと思いますが、現代ではごく少数になっていると思います。なぜって、現代の科学は高度に専門的だし、知れば知るほどファンタジーから遠ざかるし、熱力学第二法則や相対性理論は破れないし。なので「SFというファンタジーの1ジャンル」の壁を破ったSFを現代で描くことは難しい。 でもこの作品には『サイエンスで、フィクション』があります。学問の本当の厳密性はわからない(それはSFに必要ではない)ですが、現代的な科学のワードを魅力的に散りばめつつ、歪で魅力的な未来像を描くことに成功しています。 そういう強いセールスポイントを持ちながら、それだけではないのもこの作品の魅力。生意気でコケティッシュな天才少女、謎の組織の暗躍、恋の予感、クローン人間と、エモに食い込んでいきそうな流れが徐々に展開されていきます。 主人公たちの未来はどうなっていくのか、現実の表層を一枚剥がした奥に存在していそうな絶望の世界に立ち向かえるのか。気になります。
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