鷹取 はるな

頑なな『雪姫』の心を解かす王子様は一体、誰?
当の本人が嫌がるであろうことを承知の上で、敢えて断言明言を致します。 本作品の主人公である畠山ユウは、正真正銘の『雪姫』です。 類稀な妙なる美しい声と、その容れ物に相応しい美しい容姿をも兼ね備えた『雪の歌姫』です。 性別が男であろうが、年齢が三十才であろうが、そんなことでは全く揺るぎようがありません。 堅牢堅固な『雪姫』です。 別の言葉で表すのならば、純粋過ぎてまるで融通が利かないのです。 自分でも分かっていて気にしているのが、何とも痛々しいです。 ユウはただただひたすらに一途に「歌うこと」を愛し、――愛し過ぎた故に一切周りが見えなくなってしまっていました。 私にはこれが、ひとえに歌の呪いの所為に思えてなりませんでした。 雪姫は歌に愛され、そして呪われてもいるかのようです――。  芸能界という魔界の崖っぷちに追い込まれた、孤高にして孤独な雪姫を救うべく時同じくして現れたのは二人の王子様。 一人は、有望株の年下のアイドル・零。 もう一人は、年上の芸能事務所社長・御堂。 共通点は男というだけで、あとは何一つ似通ったところはありません。 ――いや、ありました。 ユウに対しての凄まじいまでの執着、なりふりの構わなさです。 零は売り出し途中のアイドル、御堂は一企業のトップというそれぞれの自らの立場を顧みずユウへと迫り構います。 それらの行ないに対するユウの態度は、まるっきり熱が伴わないものでした。 彼らに対して「冷たい」のではなく、自分自身に対して「冷たい」のです。 その対照的なまでの差異(ギャップ)に、読んでいてグイグイと引き込まれてしまいました。 ユウは一体、どちらを選ぶのだろうかと。 本作品のラストでは、ギャンブルにおいて高額な払い戻し金を意味する言葉が冠された音楽祭が開催されます。 出場することになったユウは文字通り、実に大きな大きな「賭け」に打って出ます。 姫は姫でも、王子様に護ってもらわないと生きていけないか弱い存在では到底成し得ないような「賭け」です。 ましてや、本物の雪の様にただただ冷たいだけでも出来ないでしょう。 今までの雪の如き美しさに加えて、一連の騒動を乗り越え「熱」をも得たユウがどの様な選択をしたのかは、是非ともお読みになって目の当たりにしてみてください。 読み終えた今では、私も彼の歌に、生き方に魅了された大勢のファンの内の一人です。
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丁寧なご感想有難うございました!(^^)! ユウは生粋の『歌うたい』故に、非常に不器用な生き方をしてます。一時は妥協する事を選ぶものの、やはり自分に嘘を吐く事は出来ずに心のままに行動するという。 そんなユウの生き様に「魅了された」と言って頂き、とても嬉しかったです😄 はるなさんはこのヒネクレモノの先のお話を知っているだけに、ある意味「ネタバレ」状態で読んでしまった訳なので、退屈じゃなかったかな~と心配してました💦 読了お疲れ様でした🍵🍡
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ちゃんとした書評であれば、ユウと御堂社長との関係について触れるのでしょうが、それだと「感じて想ったままに書く」ことにならないので、思いの丈をそのまま書かせて頂きました<(_ _)> 退屈する暇もありませんでしたよ! 御堂社長の溺愛暴走っぷりと、零君の猪突猛進とが面白かったです。 こちらこそ、素晴らしい機会を頂きありがとうございました!
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