鷹取 はるな

『蠱惑的』なノンストップ・ロードムービー
実は個人的に、連載中から毎回の更新を楽しみに追いかけさせて頂いた作品です。 今回、改めて感想を書くにあたり、通しで一気に読み返させて頂きました。 私には堪え性がなく絶対に無理なのですが、「完結した作品しか読まない」と公言される方のお気持ちが初めて分かったような気が致します。 読書中の没入感が半端ないのです。 もちろん、作者様の良い意味での簡潔にして淡々とした文章のお力が大きいのでしょう。 登場人物たちに対してとられた程よい距離感の描写が、逆に感情移入をし易くしてくれているのです。 読む側に、私に想像する余地をちゃんと残しておいてくれているのです。 本作品は小説ですが、映像が目に浮かぶかの様でした。 故に、感想タイトルへとあえて「ムービー」の文字を冠させて頂きました。 再読中は物語の中に入り込んで、まるで私も主人公のナツと一緒に旅をしている心持ちでした。 疑似体験的な感覚に、どっぷりとハマってしまいました。 奇しくも今が作中と同じ季節なのも演出効果のようで、何やら暗示的だと考えるほどでした。 とても心地のよい旅行、――時間でした。 又、伏線と思しき箇所を見つけ出すのも、再読ならではの醍醐味です。 各所に置かれた布石がけして大げさではなく、実に自然で巧みなのです。 独りで、「なるほどそうだったのか」とニヤニヤすることしきりでした。 これもある種の『読書の愉しみ』だと言えるかと思います。 さて、主人公のナツの旅が一体どの様なものであったかは、皆様方にも是非ともお読みになり『疑似体験』をして頂きたいのです。 ネタバレなしでは到底説明出来ないような「真実」が、ナツを待ち構えています。 それはナツ自身のことでもあり、彼が住む世界にも関わる「真実」です。 必ずや大いに驚かれ、そして大きくうなずかれるかと思われます。 そう、私と同じ様に――。 全くのおせっかい大きいお世話なのですが、作者様の他の作品も併せて読んで頂くとさらに驚きと納得、そして『ニヤニヤ感』は増します。 世界の構成する秘密の欠けらを発見した時の様な、不思議な優越感に浸れること請け合いです。
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