和の空気を持つ、重厚なローカル視点ファンタジー
 Web小説ながら古典作品のような風格のあるファンタジーです。  多島海の中の小さな島を舞台とした戦乱を描いた非西欧系ファンタジーといえばどうしても原作ゲド戦記の冒頭を思い出してしまいますが、この世界には魔法らしい魔法はなさそうです。  登場するのは海を自在に泳ぎ回る馬、水馬です。この子たちがまた可愛い。現実で会いたくなりますね……(錯乱気味)広義のファンタジーを描く際に見逃されがちな、「幻想をどのイメージに集中させるか」が考え抜かれていて、またそのイメージが美しいです。  また世界観が、相当に研ぎ澄まされた和の空気を持っているのも特筆すべき点でしょうか。  またこの作品を語る上で、もう一点重要な点があります。  魔法や、魔法に類する強い手段がないということは、襲ってきた大きな苦難を主人公の驚異的な活躍で撃退する展開にならないこと。  多くの英雄の物語は、魔法や奇跡の連続で最高の結末を迎えますが、それらの連鎖が起きないということは、奇跡的な救いは訪れず、人々は長きにわたって辛酸を舐めることになる。  でも、現実世界の人間の歴史もそうなんですよね。苦しいだけの人生をなんとかして生きてきた人々が過去にいたから現在があることにも思いを馳せてしまいます。  優れた作品は読者のいまにもフィードバックがあるのですね。そんな気がいたしました、素敵な読書体験をありがとうございます!
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素敵な感想ありがとうございました! 作品を書くにあたって、いつもテーマに添えているのは『それでも、生きていく』です。現実から目をそらさずに生きていくリキの姿に、それを感じ取っていただけたなら幸いです♪
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