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文豪が死んだ
橘 弥久莉
2022/9/29 14:02
熱量が感じられる恋愛文学作品
私のような拙い言葉で感想を語って良いもの か悩みましたが、書かせていただきます。 現代の文豪、城倉巧先生の遺作が本物か偽物 かを見極めるという、今までにない物語の 切り口に引き込まれました。 そして序盤から「居竦まる闘鶏」の圧倒的な 筆力。恥ずかしながら何度辞書を開いたこと かわかりません。そして城倉先生の作品に 強く深く心を奪われた里美さんの描写。 その文章を読むにつけ、もしかしたらこの 物語を書いた狗夜様にも同じくらい心を寄せ ている作家さんがいるのかも知れないと感じ ました。 物語を読み進める中で明かされた「生ける屍」 という事実にも鳥肌!そして運命に導かれた 二人が恋に落ち、更に罪を重ねながら刹那的 な恋にのめり込んでゆく。 どちらも親の愛情に恵まれず、どちらも母 の自死の現場を目の当たりにしていて、闇が あるからここまで恋が燃え上がったのだろう なと感じました。けれど実父を殺害し、 ヒデさんを殺害し。罪を重ねてゆく城倉先生 の死にたい理由が変わっていきましたね。 一度目は殺人を犯した罪を抱えきれないから 死のうとして友奈さんと出会ったけれど、 最後は里美さんを愛しているが故に、失う ことを恐れて命を手放してしまった。 両親からまともな愛情を与えられず、愛さ れることに慣れていないからこそ、過度に 失うことや孤独に怯えてしまうのかも知れ ないと感じ、先生の抱える闇を通じて現代 の様変わりした子育ての在り方に疑問を 投げかけているように思いました。 先生の描写の端々に刹那的なものが散りばめ られていたので、二人が生き延びて結ばれる 結末はないと思いながら読み進めましたが、 先生を失った悲しみに打ちひしがれながも、 遺作を映画化し世に伝えた里美さんの情熱は 凄かったです。最初から最後まで、里美さん を見守りながら先生の死後はまるで命綱の ような存在だった宮瀬の伯父さんもカッコ よかった。 先生の本を読み終え、歩き出した街中で 居るはずのない先生の声を聴きながら これからも一人で生きてゆく決意をする 終わり方も、心に沁みて素敵でした。 いまのはわかりやすいハッピーエンド ばかりが称賛されますが、私はこういう 結末も好きです。 最後に、「報われることを前提とした努力は ~」という城倉先生のセリフ。 骨身に染みました!! 素敵な恋愛文学をありがとうございました。
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狗夜 凛
2022/9/29 22:25
橘 弥久莉さん、とても素敵なご感想ありがとうございます✨💕 毎日きちんと深くまで読んでくださっていたこと、ペコメからすごく感じていました。 なんとありがたいことか。 どんなにうれしいことか。 橘さんからも熱量が感じられ、胸が熱くなっていました。 このご感想でも、言葉一つ、場面一つを浮かべながら書いてくださったことが伝わります。 作者として、感極まるという言葉以外にありません。 城倉作品については、これといった意識や工夫をしたわけではなくて、すらすら書いていた感じでした。 私の中にあるものを、ただ文字に変えていった感じで、もしかしたら私のありのままの文章だったかも知れません。 本作で書く苦
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