私はこの小説を読みたくはなかった……
 この短い小説を読み終えて思った。この作品はある意味、TLと呼ばれる私が模索している分野への果敢なる挑戦なのではないか。  それほど、この作品は衝撃的の一語に尽きる。  凡百の賞賛はハッキリいってこの作品には、小学生の作文ほどの価値も見出すことが出来ない。  だが敢えて私は、私にとって価値ある作品を見出した喜びを、他の人々に伝えるため、ありきたりの美辞麗句を書き連ねる以外にはないのだ。  エブの読者たちよ。  この作品は決して新しいことを小説らしい技巧を凝らして書いているわけではない。  実を云えば、自然主義の大家、大花袋、大藤村の如く人生と社会の真実の姿をありのままに飾り気なく綴っているに過ぎない。  だが技巧なく描かれた人生の真実が読者に与える衝撃を想像するとき、私は作者の類まれなる才気に感嘆の目を向ける以外にない。  そしてこの衝撃を、まだこの作品を読まぬあなたたちより先に読了したことに、幾分の優越感を覚えずにはいられないのだ。  私は今、興奮の昂まりを抑えることが出来ずにいる。  すごい小説を読んでしまった。  私の言葉はそれに尽きる。  そしてもう一言付け加えよう。  私はこのような小説を絶対に読みたくはなかった。  これこそ、この作品への最大の賞賛であることを信じ、またこの作品がもっと多くの人に読まれることを望み、私はこの拙い筆を置きたい。
1件

この投稿に対するコメントはありません